【読書記録】原田マハ「#9(ナンバーナイン)」:上海を舞台に繰り広げられる大人の恋愛物語

恋愛小説

こんにちは。ぽてとです。原田マハさんの「#9(ナンバーナイン)」読了しましたので記録をば。

冒頭の掴みがうまい…!

ギャラリーの美人オーナーの部屋に掛けてある一枚の印象的な絵画。オーナーの大切にしている私物で誰もその絵の作品名や画家名を教えてもらえない。ただひとつの手掛かりは絵画の裏に記された「#9(ナンバーナイン) 」の文字だけ…。

読み始めてすぐに「これは絶対面白いやつ!」と興奮しました。それでは作品情報いきましょう。

作品情報
作品:#9(ナンバーナイン)
著者:原田マハ
出版:宝島社文庫
初版:2009年12月19日

意外と初版から時間が経っていました…!

原田マハ著「#9(ナンバーナイン)」は、こんな人におすすめ!

  • 中国(上海)に興味がある人
  • シンデレラストーリーが好きな人
  • 芸術をテーマにした小説が読みたい人
  • セレブとの恋愛に興味がある人

ドキドキしながらページをめくっていきました!

原田マハ著「#9(ナンバーナイン)」 あらすじ

東京でインテリア・アートの販売員をするOL、真紅。仕事に挫折し、母親の待つ故郷に帰るべきではないかと悩んでいたある日。ふと立ち寄った宝石店で出会った見知らぬ中国人紳士に運命的な恋をする。真紅は「また会いたい」という一心で、紳士に渡された電話番号を頼りに上海に渡る。まるで見えない糸に導かれるように再会する二人。未来は、幸せなものかと思われたが—。上海を舞台に繰り広げられる大人の恋愛物語。

「BOOK」データベースの商品解説より

原田マハ著「#9(ナンバーナイン)」を読んだきっかけ

原田マハさんの芸術を題材にした小説を読みたいと思い、未読だったこの本を手に取りました。

原田マハ 著「#9(ナンバーナイン)」読書記録

指輪のイメージ

作品中で印象的だった文章をピックアップ。

絵そのものが喜んで笑っているような。いや、ずっと見ていたかったのに、途中で醒めてしまった夢のような。それとも、寂しく懐かしい憧れのような。

#9(ナンバーナイン)/原田マハ著

静謐で、充実した時間が流れた。この刹那だけ、私は自分のいまいる場所を、未来の不安を、自分自身を、安心して見失うのだった。


#9(ナンバーナイン)/原田マハ著

メインの舞台は中国・上海

ごみごみとした街の雰囲気や情景描写に、まるで自分もそこに一生にいるような気分になります。

 排気ガスと、腐ったゴミと、スパイスの匂い。澱んだ川の匂いもする。
 ものすごい勢いで行きかう車と、押し寄せるバイクと自転車の波。あちこちでクラクションが鳴り、がなりたてるような叫び声が上がる。歩道を行く人々は突進しているように見える。
 大通りに出た瞬間、一気に開けた視界の中に現れたのは、広々とした河と、その向こう側の浦東の高層ビル群だった。巨大な要塞さながら、朝日を反射して浮かび上がっている。

「晴れ晴れと広がった風景画の前で、ぽつんと立ち尽くす小さな私がいる。」

という表現も、心細い真紅の心情と異国の地に圧倒されている様子がよく伝わってきます

シンデレラストーリー?

OLだった真紅がある日ふと立ち寄った宝石店で運命の出会いをして、その後の人生が大きく変わる。といういかにもなシンデレラストーリー…かと思いきや、実はそんな単純な話ではありません。物語の中で真紅は対照的な二人の男性の虜になります。燃え上がるような情熱的な恋か、心安らぐ相手との恋か…物語の冒頭、そして終わりには真紅に想いを寄せる純朴そうな男性も。果たしてどの男性と真紅は幸せを掴むのでしょうか。

青年実業家、王剣(ワンジェン)

始めこそ、芸術を愛する穏やかで紳士的な青年実業家でしたが、物語が進むにつれてだんだんと「自分が欲しいと思ったものは何としてでも手に入れようとする」彼の本来の姿が見えてきます。真紅のことも、彼女自身を好きになったと言うよりは、彼女の審美眼に惚れ込んだということでしょう。ただ、王剣とのシーンは官能的で、大人の恋愛小説というのも頷けます。

#9(ナンバーナイン)

#9との出会いは、王剣の秘書紅梅(ジャンメイ)に連れられたマッサージ店です。男性施術者(マスーア)として働く彼のマッサージを受けていると、様々なイマジネーションが生まれ、その感覚にすっかり虜になってしまいます。名前も知らず、言葉も交わさず、目も合わせない中で、施術を通して心を解き放たれる相手に魅了されるのも、また違った大人の恋愛ではないでしょうか。

南駿介という男

物語の序章、そして最終章に真紅に好意を寄せている純朴な青年として描かれています。彼の視点からある絵画にスポットが当てられ、その絵画が生まれた時期の話に場面は転換します。また、最終章で、真紅と一緒に上海を訪れるのも南です。真紅が上海でどのような日々を過ごしたのか何も知らずに、その表情から色々と読み取ろうとする青年南と、すべて知った上で読んでいる読者。お互いに何も知らなかった序章とまるで立場が違っているのもなんだか面白いです。「南くん、頑張れ!」と応援したくなると同時に、真紅の新たな幸せを願ってしまいます。

原田マハのアートを題材にした小説に外れはない

作者の原田マハさんは、キュレーター(学芸員)としての資格を持ち、実際に美術館で勤務していたということもあり、作中の登場人物の美術品の鑑賞の仕方などは非常にリアリティがあります。恋愛要素も加わり、芸術に関心のある人もそうでない人も楽しめる物語になっており、「#9(ナンバーナイン)」は読み応えのある作品になっています。アートを題材にした作品って知的好奇心を刺激されますよね。色々読んでみたいなと思います。

原田マハ プロフィール
1962 年東京都生まれ。関西学院大学文学部日本文学科、早稲田大学第二文学部美術史科卒業。伊藤忠商事株式会社、森ビル森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館勤務を経て、2002年フリーのキュレーター、カルチャーライターとなる。2005年『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞し、2006年作家デビュー。2012年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞を受賞。2017年『リーチ先生』で第36回新田次郎文学賞を受賞。ほかの著作に『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『たゆたえども沈まず』『常設展示室』『ロマンシエ』など、アートを題材にした小説等を多数発表。画家の足跡を辿った『ゴッホのあしあと』や、アートと美食に巡り会う旅を綴った『フーテンのマハ』など、新書やエッセイも執筆。
原田マハ 公式サイトより
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