こんにちは。ぽてとです。凪良ゆうさんの「流浪の月」読了しましたので記録をば。
広瀬すずさん、松坂桃李さん出演の映画も話題です。
作品情報
作品:流浪の月
著者:凪良ゆう
出版:創元社文庫
初版:2022年2月25日
凪良ゆう著「流浪の月」は、こんな人におすすめ!
- 美しい作品を読みたい人
- 話題作に興味がある人
- 他人の善意や優しさに疑問を持っている人
- 物事の真実を深く考えたい人
凪良ゆう著「流浪の月」あらすじ
最初にお父さんがいなくなって、次にお母さんもいなくなって、わたしの幸福な日々は終わりを告げた。すこしずつ心が死んでいくわたしに居場所をくれたのが文だった。それがどのような結末を迎えるかも知らないままに――。だから十五年の時を経て彼と再会を果たし、わたしは再び願った。この願いを、きっと誰もが認めないだろう。周囲のひとびとの善意を打ち捨て、あるいは大切なひとさえも傷付けることになるかもしれない。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。本屋大賞受賞作。
出版社あらすじより
凪良ゆう著「流浪の月」を読んだきっかけ
本屋大賞、映画化で話題になっていたため。タイトルにも惹かれました。
凪良ゆう著「流浪の月」読書記録
作品中で印象的だった文章をピックアップ。
でも多分、事実なんてない。出来事にはそれぞれの解釈があるだけだ。
流浪の月/凪良ゆう著
ひどく素直な告白だった。ひとりのほうがずっと楽に生きられる。それでも、やっぱりひとりは怖い。
流浪の月/凪良ゆう著
事実と真実はちがう。
流浪の月/凪良ゆう著
主な登場人物
家内更紗(かないさらさ)…誘拐事件の被害者。自由な考えを持つ「浮世離れした」両親のもとに育つ。
佐伯文(さえきふみ)…誘拐事件の加害者。育児書を信じ込む教育熱心な母親に育てられる。
亮くん…大人になった更紗と同棲している彼氏。結婚も考えている。
安西さん…更紗のバイト先の同僚。
「事実と真実は違う」
この物語には「誘拐事件」が絡んでいます。その当事者の更紗と文は、実は世間が思っているような関係ではなく…。強い絆で結ばれた二人だけれど、一緒にいることを世間は許してくれない。「事実と真実は違う」という一文が心に残りました。弱者に対しての善意だとか同情みたいな所謂優しさを持って接してくる人達。彼らの言う「事実」は間違っていないけれど、彼らの解釈は「真実」ではない。そのギャップに更紗は苦しみます。切なくて、美しい物語だと思いました。
わたしを知らない人が、わたしの心を勝手に分析し、当て推量をする。そうして当のわたし自身がわたしを疑いだし、少しずつ自分が何者なのかわからなくなっていった。
流浪の月/凪良ゆう著
どんどん追い詰められていく更紗に、胸が痛くなりました。
印象的なフレーズ
頭上では蝉が短い生を謳っている。蝉ですら。
流浪の月/凪良ゆう著
これは、文を救いたいと思う更紗が、文が何もかもをあきらめたようにしているのを感じたときの一文。蝉ですら。というひと言に、更紗の虚しさが詰まっていると思います。
安西さんの存在
更紗を特別な目で見る人たちと対照的に、あっけらかんとして大雑把な安西さんの姿が印象的。自身も実は幼いころに辛い目に遭ったり、DV被害に遭ったりと壮絶な人生を歩んでいます。更紗の相談にも乗り、交換条件で娘を預かるようにお願いしたりするところはちゃっかりしていて、更紗にとってはそれが気楽だったとのこと。ただ、娘の梨花ちゃんに対する母親としての安西さんの描かれ方は、読み進めている間はどう捉えたらよいのか迷うところです。
オールドバカラのグラス、トゥルー・ロマンス
似て非なるもの。更紗と文の関係性を表しているようにも思え、この物語で重要な要素なのでは。
わたしたちはふたつのグラスを見比べた。似たような形をしているけれど、ひとつはワイングラスでひとつはロックグラス。似ているのにちがう。
流浪の月/凪良ゆう著
更紗は、このグラスを「まるで自分たちのよう」に感じます。
ハッピーエンド派の監督に対してアンハッピー派の脚本家。どちらも譲らず二種類のエンディングを撮ったが、公開されたのは監督が推すハッピーエンド版だった。幻のアンハッピー版は、あとで出たディレクターズカット版の特典映像としてつけられたらしい。
流浪の月/凪良ゆう著
更紗も文も、元々知っている「ハッピーエンド版」で良いと言い、物語の中ではアンハッピー版を観ることはありません。もしかしたら、自分たちの将来に重ね合わせて幸せに終わるほうを望んだのかなと思いました。
凪良ゆうプロフィール 滋賀県生まれ。2007年、『花嫁はマリッジブルー』で本格的にデビュー。以降、各社でBL作品を精力的に刊行し、デビュー10周年を迎えた17年には非BL作品『神様のビオトープ』を発表、作風を広げた。巧みな人物造形や展開の妙、そして心の動きを描く丁寧な筆致が印象的な実力派である。19年に刊行した『流浪の月』が、多くの書店員の支持を集め、2020年本屋大賞を受賞。おもな著作に『未完成』『真夜中クロニクル』『365+1』『美しい彼』『ここで待ってる』『愛しのニコール』『薔薇色じゃない』『わたしの美しい庭』『滅びの前のシャングリラ』『すみれ荘ファミリア』がある。 創元社 著者略歴より