現代版おとぎ話!?伊坂幸太郎著「マイクロスパイ・アンサンブル」読んでみた感想。

読書

こんにちは。ぽてとです。伊坂幸太郎先生の新作「マイクロスパイ・アンサンブル」早速読みましたよ〜イッキ読みでした!!一言で言うと「なんかすごくいい話」です(曖昧…?笑)。できるだけネタバレしない範囲で、感想を綴りたいと思います。

マイクロスパイ・アンサンブル 著者:伊坂幸太郎プロフィール

1971年5月25日生まれ。千葉県松戸市出身。東北大学法学部卒業。大学卒業後、システムエンジニアとして働くかたわら文学賞に応募、2000年『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー。数年後に作家専業となった。宮城県仙台市在住。(Wikipediaより)

マイクロスパイ・アンサンブルは、元々は野外フェスのために書かれたもの

「マイクロスパイ・アンサンブル」は、2015年から福島県の猪苗代で毎年開催されている「オハラ☆ブレイク」という音楽とアートのイベントで、来場者に配布する小説として書かれました。2015年に「1年目」部分が、それから毎年続いてなんと「7年目」まで到達。つまり、これは7年間かけて書かれた物語ということになります。こんな本中々ないのではないでしょうか。

また、この小説には「The ピーズ」や「TOMOVSKY」の曲の歌詞が引用されています。音楽好きの伊坂氏だからこそ、歌詞を組み込んで小説をうまくまとめられているのではと思います。「アイネクライネナハトムジーク」で、「斉藤和義」の曲を使用して小説を書いていますが、今回もそれと似た手法で執筆されているようです。

まさに、伊坂幸太郎にしか書けない小説!

マイクロスパイ・アンサンブルは、現代版御伽噺(おとぎばなし)

作者自身もあとがきにてコメントしているように、「御伽噺(おとぎばなし)」のような、ちょっぴり不思議なお話なんです。冒頭「昔話をする女」という短い話がありますが、それも御伽噺らしさを作っているなあと感じました。ただ、御伽噺といっても大昔の話というわけではないので、個人的には「現代版」とつけたい。勝手に(笑)

マイクロスパイ・アンサンブルはイッキ読みできるけど…

短編集のいいところはサクッと読めるというところですが、この本もその例に漏れず。会話文も多くテンポよく話が進んでいくので読みやすいです。ただ、ころころと場面(語り手)が変わるのでそれに慣れるまでに少し集中力がいるかもなあと思いました。

フェスに合わせて一年ごとに書くので「続きは来年の自分に任せた!」とぶん投げていたそうです。(ダ・ヴィンチ2022年6月号より)ぶん投げ続けて7年かけて完成に至ったのもすごいですね。何より7年間伊坂氏が元気で書き続けていてくれてよかった。

マイクロスパイ・アンサンブルと伊坂幸太郎他作品とのリンク

伊坂作品の魅力その1。伊坂幸太郎の人気の理由の一つに、「他作品とのリンク」があるのではないでしょうか。何気ない一文で、気付かない人は気づかないし、気付かなくても問題なく読めるのですが、「あ!」と発見した時にはつい、ニヤニヤしちゃいます(笑)今回もニヤニヤ案件ありましたよ~。

p44「ハシビロコウ」というワード…クジラアタマの王様を連想させる

p53「日本人がボクシングのヘビー級王者になった」…アイネクライネナハトムジークのウィンストン小野

表紙:装幀・装画ともにアイネクライネナハトムジークと同じ人が手掛け、どちらにもペンギンが描かれている

「実は○○な世界」…夜の国のクーパーでも同じようなことが…

などなど。ほかにもあるかもしれません。また見つけたら追記します!

上記で紹介した本はこちら!

マイクロスパイ・アンサンブルは、セリフが良い

伊坂作品の魅力その2。なんといっても登場人物のセリフです。とにかく等身大で、でもかっこいい。素朴な疑問だったり、ときにはガツンと自分の言いたかったことを言ってくれる。常識にとらわれすぎず、常識はずれにもならない。そんな絶妙で魅力あふれるセリフがどの作品にもあって勇気をもらえます。もちろん今回の作品にも。

自己嫌悪に陥るのは、自分に期待しているからなのか。もっと自分はいい人間であるのに、もっといい人になれるはずなのに、と思うからだろうか。

マイクロスパイ・アンサンブル/伊坂幸太郎

自分のことを評価してやることは大事だけどな、謝って削れるようなプライドなんて、大したものじゃない。面子が、だとか、立つ瀬がない、だとか言っている奴ほど自信がないんだよ。本当に自分を信じているなら、周りがどう思おうと関係ない

マイクロスパイ・アンサンブル/伊坂幸太郎

時間と他人の心、それ以外は、どうにでもなりますよ

マイクロスパイ・アンサンブル/伊坂幸太郎

時間と他人の心~の一文は、SNSでの書評でも挙げている方が多い名言でした。プライドの話も然り。

伊坂作品は基本的に勧善懲悪なので、スカッとするんですよね。なんかおかしいぞ?と思うことをズバッと斬ってくれます。理不尽で世知辛い世の中だけど、頑張れそう!と明日への希望が生まれます。

マイクロスパイ・アンサンブルの読後の幸福度☆☆☆

この物語には、どうしようもなく「善い人」が登場します。もう、びっくりするくらい善い人。「七年目」で回収される伏線も、感動的でした。笑っちゃうような偶然や奇跡が物語の中にはたくさんあります。「もしかしたら、そんな面白いこと現実にあるかも」と自然と思わせてくれるのは伊坂氏の手腕だなあと思います。きれいごとでまとめない、というか。

作者の伊坂氏は「最後の2年はコロナ禍が重なったこともあり、お話の中くらいはハッピーなものにという意識は強かった」と言っています。(ダ・ヴィンチ2022年6月号より)最後のほうにこんなセリフがあります。

「こっちはこっちで楽しくやれていますけれど、ただ思うんですよね。あっちにいる人たちが、ちゃんと幸せになってくれればいいな、って」

マイクロスパイ・アンサンブル/伊坂幸太郎

こんな心を世界中の人が持っていたら、世界はもっと善いものになるのになと思います。いい星じゃんか、とみんなが思える世界に。

マイクロスパイ・アンサンブルで使われている楽曲

最後に、「マイクロスパイ・アンサンブル」で使用されている楽曲を紹介します。

  • 「一年目」グライダー:Theピーズ
  • 「二年目」サマー記念日:Theピーズ / スポンジマン:TOMOVSKY
  • 「三年目」負け犬:Theピーズ
  • 「四年目」その2つ以外は / 作戦会議:TOMOVSKY
  • 「五年目」日が暮れても彼女と歩いてた / 全部あとまわし / 異国の扉:Theピーズ
  • 「六年目」立派な浮遊霊:TOMOVSKY / みじかい夏は終わっただよ / このままでいよう:Theピーズ
  • 「七年目」希望の星 / 心動け / いい星じゃんか:TOMOVSKY / やっとハッピー:Theピーズ

まとめ

現代版おとぎ話!?伊坂幸太郎著「マイクロスパイ・アンサンブル」読んでみた。いかがでしたか?実はこの本、通常版・福島県限定版・蔦屋書店限定版とカバーが三種類あるんです。CDみたいですね(笑)私は蔦屋書店限定版の夜のイラストのものをゲットしました。

最後までお読みいただきありがとうございました♪

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